計算方法なび

計算方法なび♪では退職金にかかる税金(所得税・住民税)や退職金の実際の手取り額の計算・退職所得控除の計算方法がどのように算出されているのか?について初心者向きにイラストや図を用いてわかりやすく解説しております。

◆退職金にかかる税金・退職所得控除の計算方法なび♪(もくじ)

◆退職金・退職所得控除とは?

退職金とは、会社を定年退職、もしくは中途退職をした際に支払われる「手当て金」に分類される所得の事です。

この退職金も給与と同様に支給された年度の所得としての扱いとなるので、「所得税」「住民税」が課税されます。

退職所得控除とは、この退職金に対する税制上の控除制度の事を指します。

前述した通り、退職金が支払われる年度は給与所得だけでなく退職所得に対しても、所得税及び住民税が課税されます。

退職金支給年度の所得税・住民税(画像)

サラリーマンや公務員であれば退職金の支給を受ける年度は給与所得もあるので、退職年度の納税額は大きくなることが一般的です。

その為、退職所得控除の仕組みは確実に把握しておきたい課目のひとつであるとも言えるでしょう。

◆退職所得控除の計算方法

退職所得控除額の計算は、退職金受給者のその会社に対する「勤続年数」によって大きく異なります。

退職所得控除額の計算は以下の計算式を用いて算出します。

退職所得控除の計算方法(イラスト図)

計算式はとても簡単なものですが、更に初心者向きに解りやすく勤続年数別の退職所得控除一覧表を作成してみました。

退職所得控除の計算式を忘れてしまう場合もあると思いますので当ページをブックマークしておくと便利かもしれません。

退職金のおおよその金額が把握できている場合は自分の勤続年数を確認し、後述している退職金の手取り額の計算をしてみましょう。

勤続年数別の退職所得控除額一覧表
勤続年数
(控除額)
勤続年数
(控除額)
勤続年数
(控除額)
勤続年数
(控除額)
1年
(40万円)
11年
(440万円)
21年
(870万円)
31年
(1570万円)
2年
(80万円)
12年
(480万円)
22年
(940万円)
32年
(1640万円)
3年
(120万円)
13年
(520万円)
23年
(1010万円)
33年
(1710万円)
4年
(160万円)
14年
(560万円)
24年
(1080万円)
34年
(1780万円)
5年
(200万円)
15年
(600万円)
25年
(1150万円)
35年
(1850万円)
6年
(240万円)
16年
(640万円)
26年
(1220万円)
36年
(1920万円)
7年
(280万円)
17年
(680万円)
27年
(1290万円)
37
(1990万円)
8年
(320万円)
18年
(720万円)
28年
(1360万円)
38
(2060万円)
9年
(360万円)
19年
(760万円)
29年
(1430万円)
39
(2130万円)
10年
(400万円)
20年
(800万円)
30年
(1500万円)
39
(2200万円)

◆退職金所得とみなされるもの

課税対象となる退職金とみなされるものには、会社から支給される退職金以外にも退職金としてみなされるものが幾つかあるのじゃ。

以下に記載する3種類の一時金は課税対象の退職金とみなされる事を覚えておくことじゃ。

【退職金とみなされる所得の一覧】
①確定給付企業年金法に基づき支給される退職一時金
②各種共済制度に基づく退職一時金
③小規模企業共済に基づいて支給される退職一時金

◆勤続年数14年の社員の退職所得控除の計算例

A:勤続年数14年の場合の計算例

勤続年数14年の社員の退職所得控除額を計算する場合は、まず前述した退職所得控除の計算方法の計算表をチェックすると勤続年数が20年以下の計算式を用いれば良いことが解ります。

20年以下の場合は一律、一年に付き40万円の控除が適用になる訳ですから、この場合の計算式は

※40万円X14(勤続年数)=560万円

となり退職所得控除額が560万円となる事が解ります。

計算式さえ覚えてしまえば誰でも簡単に退職所得控除額を算出することが可能です。

◆勤続年数35年の社員の退職所得控除の計算例

B:勤続年数35年の場合の計算例

勤続年数35年の社員の退職所得控除額を計算する場合は、先ほどと同じように退職所得控除の計算方法を参照すると、勤続年数が20年以上に該当する事が解ります。

勤続年数が20年以上のケースでは、まず20年までの部分を一年に付き40万円で計算します。

※40万円X20(勤続年数)=800万円

この計算では答えが800万円となりますが20年以上の会社勤めを行なっている方の場合は、20年までの部分は勤続年数に関わらず皆同じ控除額となることがわかります。

先ほどの計算式の表の最初に記載されている800万円とはこの20年までの部分の事ですね。

後は残りの年数を70万円の単価で計算し合算するだけで退職所得控除額が算出できます。

今回の事例の勤続年数35年の社員の退職所得控除の求め方は以下の流れとなります。

①70万円×15(35-20=15)=1050万円
②1050万円+800万円=1850万円

以上の計算からこのケースでは1850万円が退職金の所得控除額となります。

尚、後述しておりますが実際の課税は退職金総額から、この控除額を差し引いた額の2分の1が課税のベース額となり、このベース額に対して税金が課税される事になります。

◆退職金の手取り額はどのくらい?

会社を定年退職、もしくは中途退職をした際に支払われる退職金ですが、実際に退職金の手取額は幾らになるのか?

これはとても気になるものですね。

ここでは実際に退職金の手取り額を算出する為の計算の流れを見ていきましょう。

尚、この退職金の手取額を算出する前に、前項までに解説してきた退職金に対して受けられる退職所得控除を算出しておく必要があります。

実際の退職金の手取額を算出するには、この勤続年数などによって変化する「退職所得控除額の計算」が必ず必要となるのです。

勤続年数が把握できている場合は勤続年数別の退職所得控除額一覧表をチェックするだけで10秒で退職所得控除額が確認できます。

◆退職金手取額の計算方法・計算手順

退職金の金額ではなく、実際に所得税などが差し引かれた後の手元に残る退職金の手取り額を把握しておくことは大変重要じゃ。

もし退職金を元に今後の支払いに関する計画を建てている場合は、実際の手取り額が予定よりも少なかった場合に後々苦労することになるかもしれんからのぉ。

その為、退職後の人生設計を検討する際は、退職金の実際に手元に残る手取り額を把握しておくことが大切なのじゃな。

退職金の手取り額を算出する計算式は幾つかのステップを踏む必要がある。

慣れるまではやや難解に感じるかもしれんが計算式どおり算出することで自分でも手取り額を確認することができるようになってくるはずじゃ。

以下は退職金にかかる税金がどのように計算されているのか?そして実際に支給される退職金額の算出までの流れを示した一覧表じゃ。

退職金手取額の計算方法・計算手順(イラスト図)

◆退職金にかかる所得税・住民税の税率

退職金にかかる税金がどのように算出されているのか?の流れについてはここまで解説してきた通りじゃ。

尚、退職金から退職所得控除を差し引いた金額の2分の1の金額に対して課せられる所得税及び住民税の税率は以下のとおりとなっておる。

退職金にかかる所得税・住民税の税率(イラスト図)

所得税の計算に関しては、収入に対する累進課税方式となっておる為、退職所得課税額の金額によって税額が変わる点を覚えておく必要があるのぉ。

また、退職金にかかる住民税に関しては以前は市町村民税・道府県民税ともに住民税控除が認められておった。

しかし、平成25年度以降はこの控除はなくなり、全国一律で市町村民税6%・道府県民税4%の計10%の住民税の課税がなされるようになっておる点がポイントじゃ。

◆退職金の計算手順の解説

退職金の手取額の計算方法は、退職金総所得額(額面上の金額)からまず退職所得控除の計算方法で算出した「退職所得控除額」を差し引き、その控除額を差し引いた金額から更に2分の1の金額が退職金の課税対象額となります。

この退職金の課税計算対象となるベースの額をまず算出し、その後、ベース額に所得税率と住民税率をそれぞれかけ、上記表の青い部分である「退職所得課税額」を算出します。

退職所得課税額とは退職金にかかる税金の事ですね。

最後に、退職金総所得額(額面上の金額)から税金(退職所得課税額)を差し引いて算出された額が実際の退職金の手取り額となるのです。

◆勤続年数14年退職金400万円の社員の退職金手取り額計算例

A:勤続年数14年退職金400万円の場合の計算例

勤続年数14年の社員の退職所得控除額は前述した通り560万円です。

ですから、退職金総額400万円から退職金所得控除額560万円を差し引き、更に2分の1をかけて退職所得課税金額を計算します。

※(400万円-560万円)÷2=0

この事例では退職金総額が退職所得控除額より少ない為、全額が控除対象となります。

その為、退職金にかかる所得税・住民税はゼロとなりますので400万円全てが手取り額となります。

◆勤続年数35年退職金2400万円の社員の退職金手取り額計算例

B:勤続年数35年退職金2400万円の場合の計算例

勤続年数35年の社員の退職所得控除額は前述した通り1850万円です。

ですから、退職金総額2400万円から退職金所得控除額1850万円を差し引き、更に2分の1をかけて退職所得課税金額を計算します。

※(2400万円-1850万円)÷2=275万円

この事例では退職所得課税金額が275万円ですから、この275万円に対して所得税・住民税を計算していきます。

まず所得税は、退職金の所得税率の図の上から二番目の195万~330万円に該当するため税率は10%です。

※275万円×10%=275000円(所得税)

続いて住民税は市町村民税・道府県民税を合算した一律10%で計算します。

※275万円×10%=275000円(住民税)

ここまで計算した所得税・住民税額の合計55万5千円が退職金にかかる税金です。

最後に退職金総額から納税額を指し引いて計算します。

※2400万円-55万5千円=23445000円

退職金の実際の手取り額は以上の計算の流れから2344万5千円となることが解ります。

こうしてみると退職金はとても手取り額が多くなるよう配慮された税制となっていることがわかりますね。

◆退職金の税法上の扱いと退職前のプランニングについて

退職金は税法上は「給与所得」としてみなされます。

一生懸命長年働いてきたご褒美とも言える退職金にも、しっかりと所得税と住民税が給与所得として課税されてしまうのです。

しかし、退職金は「分離課税」と呼ばれる税制で納税額を算出するため、納税義務は生じるものの効率のよい所得となる点がポイントです。

この分離課税とは、例えば退職する年度の給与所得が900万円、退職金が2000万円の場合。

まず、給与所得900万円に対する所得税と住民税を計算します。

そして、ここまで解説してきました退職金2000万円に対する所得税と住民税を計算し、最後に合算した金額が納税額となる仕組みです。

税法上の扱いは給与所得(退職所得と記載されるケースもあります)となりますが、その年度の年収入900万円+2000=2900万円に対して所得税・住民税が計算される訳ではないのですね。

退職金の分離課税とは?(イラスト図)

仮に2900万円の年収扱いとなると、退職金の所得税率の図を見ても解る通り1800万円超の収入となり所得税率は40%になってしまいます。

但しやはり退職年度は、その年度の給与額にかかる税金にプラスして退職金にかかる税金が上乗せするため納税額はやはり膨らむことに変わりありません。

尚、この退職金の税法上の取り扱いを考慮し、退職金が多額になる場合は退職年度へ向けて不自然とならない範囲で徐々に年収を下げていく節税法等も存在します。

退職金の使い道の計算は税金を深く考慮せずに額面の退職金額で計算していると、例えば住宅ローン等の支払いを検討している場合に退職後にローンの支払が困難になる可能性も出てきます。

ですから可能であれば退職年度の4~5年以上前からしっかりとした計画を建てて置くことが重要です。