医療費控除とは、申請する年度内に実際に支払済みの医療費に対して、一定額を超えた部分の医療費の控除が適用される制度の事です。
医療費控除の適用を受ける際には、「領収証」が必要となりますので、領収証はしっかり保管しておきましょう。
医療費控除は、原則としてその年度内に支払い済みの医療費の総額に対して控除額を算出する仕組みとなっておる。
医療費控除の対象となるケースではしっかりと領収証を管理しておくことが重要じゃ。
上図の医療費控除の計算式の図にある「支払い済み医療費」とは、医療に関わる費用として自己負担した金額の総額の事です。
この支払い済み医療費には実際に病院等の会計で支払った金額だけでなく後述する、医療機関までの交通費や医療用器具類認定品の購入代金、また治療用として使用する眼鏡やコンタクトレンズ等が該当します。
また寝たきりの介護が必要となる高齢者がいる家庭では、医師が発行する「おむつ使用証明書」とおむつの購入費用を証明する領収証がある場合は、これらの費用も支払い済み医療費として医療費控除の対象となります。
上図の「保険などの補填金額」の項目に該当する項目としては、入院をした際に医療保険などから給付される「入院給付金」や「傷害費用保険金」、手術費用の保険金の他、健康保険から給付される「出産育児一時金」や同一医療機関に支払う医療費が自己負担限度額を超えた場合に還付される「高額療養費」などが該当します。
また青色枠の「10万円」と「所得額の5%」にあたる項目は、年間所得額が200万円以上の場合は一律10万円、年間所得額が200万円未満の場合が所得額の5%に該当します。
医療費控除の申請を行う為には、病院で会計の際にもらう「領収証」が必要となります。
例えば家族がいる場合でお父さんの収入のみで生計を立てている場合は、家族全員分の領収証を使用して医療費控除の申請を行う事が可能です。
尚、毎月自宅に送られてくる医療費明細書(袋とじ状の実質負担額が記載されている明細書)は実際に負担した医療費の病院名や薬局名、保険で負担している金額と実際に支払った金額の確認用の書類である為、医療費控除の申請に使用することはできません。
医療費明細書は、不足している領収証がないかどうかを確認したり、現在保管している領収証と金額が一致するかどうかの確認用の書類であると意識しておくと良いでしょう。
医療費控除の計算は非常にシンプルとなっておるが、計算の際に注意する点として、医療費控除の対象となるのは年内に支払済みの金額が対象となっておる点じゃ。
例えば、未払いの手術費用や年度をまたいで入院などをし、医療費の支払いが翌年になるようなケースでは、医療費控除の適用も翌年扱いとして計算することとなる。
では、ここからは具体的に医療費控除の計算方法についてチェックしていきましょう。
【年間所得400万で年間医療費負担額が17万6400円かかり保険からの補填が15000円あった場合】
1月1日から12月31日までの期間で、既に支払い済みの医療費で、かつ領収証が17万6400円分しっかり保管してある場合を例に計算してみましょう。
まず自己負担した医療費の総額から保険によって補填を受けた金額を差し引きます。
①176400円-15000円=161400円
続いて医療費控除の計算方法の項を確認し、年間所得額が200万円以上であることからイラスト図の10万円の方を差し引きます。
②161400円-100000円=61400円
この計算式から、今回の事例のケースの医療費控除の適用金額は61400円となることがわかります。
では、続いて全く同額の医療費負担がかかり、年間所得額が200万円を下回る190万円のケースで考えてみましょう。
【年間所得190万で年間医療費負担額が17万6400円かかり保険からの補填が15000円あった場合】
まずこの場合でも自己負担した医療費の総額から保険によって補填を受けた金額を差し引きます。
①176400円-15000円=161400円
続いて同様に医療費控除の計算方法の項を確認し、年間所得額が200万円未満であることから所得額の5%の方を差し引きます。
所得額の計算方法は、給与所得控除を差し引いた額であり、医療費控除の計算ではこの額に対して5%をかけた額を差し引いて算出される為、具体的には以下の計算式の流れを辿ります。
②190万円-76万円(190X40%)=114万円
③114X5%=57000円(差し引く額)
④161400円-57000円=104400円
以上の計算から所得額が200万円未満のケースにおける医療費控除は104400円となる事がわかります。
同じ医療費負担額であっても、年間所得額が200万円を下回るケースでは医療費控除の適用範囲も大きくなり納税負担が軽減される仕組みとなっているのですね。
医療費控除の対象には、診察や入院などの医療費だけじゃなく、治療の際に必要となる医療器具などの購入費用に関しても医療費控除の対象となります。
現在、もし医療器具の購入を検討している場合は、医療費控除の適用を受けることが可能な製品であるかどうかについて事前に担当医や販売店の方に確認しておくと良いでしょう。
医療機器類は高額な支払いとなるケースも多いことから、医療器具の控除適用については必ず把握しておきたいポイントであると言えます。
また、通院が必要となる場合は、「通院の際に負担する交通費」に関しても常識の範囲内であれば医療費控除の適用を受けることが出来ます。
これらは全て、その証明として領収証が必要となるのでバスなどを利用する際も面倒ではありますが、できる限り領収証をもらうようにしておきましょう。
病院へ通う為にバスや電車などを利用した場合の往復の交通費分は税法上、医療費控除の適用範囲として計上できる事は前述してきた通りです。
では、一般の交通機関を利用せずにタクシーを利用して病院へ行った場合の交通費の扱いはどうなるのでしょうか?
考えられるケースとしては、突然急病を発症したケースや、転倒や怪我などによって一般の交通機関を利用することが困難となるケースが想定されます。
骨折や足関節の捻挫などでも歩行は困難になり、救急車を呼ぶまでもないようなケースではやはりタクシーの利用を検討するはずです。
このように、状況に応じてタクシーの利用が適切であると判断される場合は、タクシー代についても医療費控除の適用項目として計上することが可能です。
また同様に急病などで病院へ車で行った際に生じる病院の駐車場代なども、状況に応じて適切な利用と判断される場合は全て医療費控除の適用とみなされるケースが大半です。(地域ごとの税務署によっても判断が異なるケースがあります)
税法上の判断基準の多くは、このように一般的な利用を想定して常識の範囲内で適用範囲を定めていく理念が存在する為、しっかりと説明できる費用は全て経費として計上する意識を持つことが大切です。
この基本概念が見えてくると、例えば病院への通院が一人でできないようなケースでは、普通に考えると付添人が必要となる事が誰にでも容易にわかります。
ですから、この場合は付添人の交通費なども医療費控除として申請することが可能であることも解ります。
前項のバス代や電車代に関しても、領収証を貰い忘れてしまった場合(通常は領収証の発行を受ける方が少ないものです)であったとしても、病院へ当日通った事が証明できる書類さえあれば、金額と区間を記帳した伝票とともに病院へ通院した事実が証明できる領収証などを添付した確定申告書類を提出し医療費控除の対象として含めることも可能となるのです。
通常の販売店等で購入した眼鏡やコンタクトレンズの購入費用は原則として医療費控除の適用とはなりません。
また、近視や遠視、乱視、老眼用の眼鏡やコンタクトレンズの購入費用なども医療費控除の対象外です。
但し、弱視や角膜炎などの治療の一環として、眼科医の処方箋に基づいて作成された眼鏡やコンタクトレンズを使用する場合は、これらの費用も全て医療費控除の対象となります。