夫婦共働きは現在では当たり前の家族のスタイルになりましたね。
ここで夫婦で収入を得ている共働き世帯の場合、子供の扶養者はどちらがなるべきなのか?という疑問をお持ちになられる方もいらっしゃると思います。
特に扶養者には「扶養控除」という控除が得られるため、この控除制度を最大限に活かすパターンは把握しておきたいものです。
今回は、少しわかりにくい扶養控除制度を、モデル世帯の計算事例を見ながら確認し、最もお得になる方法を覚えておいて欲しいと思います。
扶養控除とは、16歳未満の子供を除いた親族を扶養している場合に一人につき所定の控除額の適用を受けることのできる制度です。
共働き世帯の数は戦後から年々増加してきておりますが、これは今の現在子育て世代の方であれば何となくイメージで解るかと思います。
厚生労働省が提供している専業主婦世帯と共働き世帯の推移のデータでは昭和55年、専業主婦が「約1100万世帯」に対し共働き世帯は約半分の「600万世帯」でした。
しかし、平成26年には専業主婦世帯が「約680万世帯」、共働き世帯が「1100万世帯」と見事に数値が逆転しているのが解ります。
中でも特に子育て世代の共働き率は高い傾向にあります。
これは、時代背景の問題が大きな要因となっていることは明らかです。
昔のように4人兄弟や5人兄弟が珍しくもなく、また洗濯機や冷蔵庫などがどの家庭にも無かったような時代では、家事を妻が引き受ける事で家庭が成り立っていました。
そして現在は、増税に次ぐ増税、少子高齢化に伴う莫大な社会保障費負担、そして先進国で最も教育費の援助が低い日本国では多くの家庭が「夫婦2馬力」で働かないと子供を育てていけない状況にあると言えます。
ですから、その時代に沿った働き方があり、現在は共働きしなくては家計が中々成り立たない社会情勢にあるのです。
このような現状の中、16歳以上の子供(15歳未満の子供の扶養控除は子供手当ての創設に伴い打ち切り)が適用を受けることのできる扶養控除は共働き世帯の場合、夫婦どちらに適用した方がお得なのか?と疑問を持たれる方もいらっしゃると思います。
この答えはシンプルかつ簡潔に計算できますが、その前にまず旦那さん(奥さん)のお給料と自分のお給料がいったい幾らかを比較しておく必要があります。
世帯全体の納税額を計算する場合、簡潔に述べると夫婦共働き世帯の場合、多くのケースで「収入の高い方」に扶養控除を適用した方が税金の軽減率が高くなると言えます。
これは日本の税法上、所得税が累進課税制度(正確には超過累進税率方式)を採用していることが原因です。
累進課税制度は、課税所得額が高額になるほど納税率が上がる制度です。
余談ですが、所得税の税率は所得によって変化し所得税の最高税率はなんと45%にも到達します。
これは住民税も合わせると55%、実に半分以上が税金で持っていかれてしまう計算になります。(住民税は一律10%です)
⇒所得税の計算方法の解説はこちら
話は戻りますが、夫婦共働き世帯で収入に格差がある場合。
この場合は、所得税の税率が高いと想定される収入が高い方に扶養控除を適用した方が結果的に多くの納税額の軽減を受けられる可能性が高くなってくるのです。
※累進課税制度となっている日本では所得税率が高い方の扶養として扶養控除を受ける方が軽減を受けやすい
但し、単純に夫婦の年収を比較し判断するのは注意が必要です。
これは、年収が仮に高くても既に多くの税制控除を受けており、課税標準額に関しては逆転しているケースもあるためです。
夫婦の扶養控除をどちらにつけたらお得なのか?
ここでは実際に事例を交えて家族全体の税負担額を計算しながら確認してみましょう。
まずは一般的な4人家族の事例で計算してみましょう。
【4人家族の例】
家族構成 父40歳(所得400万円) 妻39歳(所得220万円)
長女18歳 長男16歳
こちらの事例のケースでは夫の所得が妻の所得を上回っております。
尚、扶養控除の控除額は扶養対象者の年齢によって金額が変わってきますので扶養控除額の計算方法の解説ページもご確認ください。
⇒扶養控除額の計算方法の解説はこちら
前項の4人家族のモデル世帯で二人の子供を夫の扶養として入れた場合について計算してみましょう。
収入の高い旦那側の扶養に入れた場合、この夫婦の所得税額は以下のようになります。
■旦那400万円-(基礎控除38万円+扶養控除38万円+扶養控除38万円)=286万円
286万円×10%-97500円=18万8500円
■妻220万円-基礎控除38万円=182万円
182万円×5%=9万1千円
よってこのモデル世帯が支払う所得税の納税額は以下の通りです。
18万8500円+9万1千円=27万9500円
続いて同じく前項の4人家族のモデル世帯で二人の子供を妻の扶養として入れた場合について計算してみましょう。
収入の低い妻側の扶養に入れた場合、この夫婦の所得税額は以下のようになります。
■旦那400万円-基礎控除38万円=362万円
362万円×20%-42万7200円=29万6800円
■妻220万円-(基礎控除38万円+扶養控除38万円+扶養控除38万円)=106万円
106万円×5%=5万3千円
よってこのモデル世帯が支払う所得税の納税額は以下の通りです。
■29万6800円+5万3千円=34万9800円
最後に同じく前項の4人家族のモデル世帯で二人の子供を一人ずつ夫、妻の扶養として入れた場合について計算してみましょう。
この場合、この夫婦の所得税額は以下のようになります。
■旦那400万円-(基礎控除38万円+扶養控除38万円)=324万円
324万円×10%-97500円=22万6500円
■妻220万円-(基礎控除38万円+扶養控除38万円)=144万円
144万円×5%=7万2千円
よってこのモデル世帯が支払う所得税の納税額は以下の通りです。
■22万6500円+7万2千円=29万8500円
ここまで3つのパターンで計算例を見てきました。
ここで共働き世帯の扶養控除をどのようにするとお得になるのかを一覧表で確認してみましょう。
共働き世帯の扶養控除の計算事例のまとめ | ||
---|---|---|
扶養控除をだれにつける? | 所得税納税額 | 控除の評価 |
収入の高い夫の扶養 | 27万9500円 | 最も軽減効果が大きい |
収入の低い妻の扶養 | 34万9800円 | 最も軽減効果が低い |
夫婦で一人ずつ扶養 | 29万8500円 | 一定の軽減効果は得られる |
今回の計算事例では解りやすくするため復興特別所得税は考慮しておりませんが、仮に入れてもこの順序は変わりません。
前述してきた通り、やはり原則として収入が高い側に扶養控除を用いる事が控除の効果を最も得られる事になります。
夫婦ですから様々な事情がありますが、特にどちらの扶養にするか揉めている場合でもない限り、課税所得が多い方が扶養義務者となるのがベストです。
※ポイント!共働きの場合、課税所得が高い方に扶養控除を使うと最大の軽減効果が得られる
いかがでしたでしょうか?
今回は共働き世帯の扶養控除の豆知識をご説明してきました。
夫婦どちらが扶養控除を受けるべきか?至ってシンプルな答えではありましたが、具体的に計算事例をチェックしながら確認してみると、今後悩まずに解決できると思います。
是非、参考にして下さい。